都市における「線材意識体」〜李禹煥の後に〜

 引き続き展開している「線材意識体」、今年は都市空間でも展開する予定だ。最近李禹煥がアーチ状のアルミ板と自然石の作品を設置した場所に予定作品をスケッチしてみた。来月私の作品がこの場所の隣のエリアに展示される。高層ビルを背景に作品がどのように見えるのかとても楽しみである。

作品イメージスケッチ(NAU 21世紀美術連立展参加予定作品 2023 2/8~19 国立新美術館)

 学生時代、李禹煥をはじめモノ派と言われた作家たちの表現は私たちに強烈な影響を与えた。彫刻科の授業は人体の塑像から始まったが、3年目から私は躊躇なく人体表現から離れ自由な実材表現のBカリキュラムに進んだ。モノ派の呪縛の中で、鉄・鉛・アルミ・自然木・自然石・パラフィン・廃棄物などを素材にして気まぐれに制作していた。当然だがいろいろな影響が色濃く表れている作品は教授から酷評され続けた。たまの好評価も自信につながらず作品制作がだんだん苦痛になっていった。

 初個展後10年以上のブランクがあり、大島への移住後数年は平面・レリーフの表現に没頭した。大島で2011年から始まった現代美術展で旧態依然と思えた表現にショックを受けた。しかし、生き生きと制作を続ける作家たちは過去にしがみついているのではなく、「今」を感じながら颯爽と表現していることに気づいてきた。

 鉄線やアルミ線を空間に編んでいく行為は自分が空間に存在していることを確かめる行為である。裏庭で「線材意識体」を制作しているとなんとも言えない至福感に包まれることがある。COVID-19の感染拡大は、お互いのつながりを壊し人間を孤立させてしまった。孤立した私は線材を編み続けることで再び世界と繋がっていくように感じていた。

 道具も使わずひたすら手で捻る行為でできていくこのインスタレーションは、デジタル化による進化に逆行しているように見られるかもしれない。しかし、私はそうは思わない。寿命は延びているが、身体は普遍的であり進化はしない。身体の複雑な活動は絶妙なバランスのもとでなされている。身体はデジタルやAIのレベルを遥かに超えた構造体だ。そのことと芸術表現は不可分だと思う。私は高度な身体性を意識しながらこれからも作品制作を続けていくのだろう。

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 大島には美術館がなく、自由に展示できるギャラリーもありません。しかし都会にはない壮大な自然があり、活火山によりつくりだされた光景には誰しも圧倒され、島全体が広大な美術館とも言えます。エネルギーが溢れる大自然の波動と自分が共鳴しながらこれからも作品制作を続けていきたいです。